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個人再生の後に返済できない場合

  • 文責:弁護士 上田佳孝
  • 最終更新日:2021年3月9日

1 個人再生手続

個人再生は、申立後、債権者の調整と裁判所の審査を通して作成された再生計画に基づき、減額された債務を3年程度で分割して支払うというものです。

再生計画を作成、審査する段階においては、債務者の方の収入・資産状況から見て返済可能であるという見通しがあることが前提となります。

もっとも、再生計画に基づいた返済を続けていく中で、景気や体調の変化などにより、再生計画に基づく返済を続けることが困難になるということも、当然想定されます。

仮に返済を滞らせたままにしてしまうと、再生計画が取り消されてしまい、個人再生を行わなかった状態、すなわち減額される前の債務額に、遅延損害金が加算された金額を支払わなければならなくなることもあります。

参考リンク:裁判所・個人再生手続について

2 再生計画に基づく返済を続けることが困難になった場合の対応

上記のように、返済が困難になった状態を放置すると、事態は非常に悪化してしまいます。

そこで、返済が困難になってしまったら、早急に次の2つの方法をとります。

⑴ 再生計画変更

再生計画変更は、端的には、元の再生計画で定められていた弁済期間を、最長2年まで延長することができる制度です。

支払う金額は元の再生計画と同じですが、弁済期間が伸びることで分割回数が増えるため、毎月の支払額が減ります。

再生計画の変更には「やむを得ない事由」が必要です(やむを得ないと裁判所が認める必要があります)。

予期せぬ景気変動などにより、給料等の収入が減少することが典型例ですが、その他にも扶養家族の病気や介護等により急に出費が増大した場合等も該当する可能性があります。

⑵ ハードシップ免責

ア 今までは滞りなく再生計画に基づく返済を行ってきたものの、やむを得ない事由が発生し、返済が困難になってしまった場合、再生計画の取消しや自己破産をしなければならないとするのは酷であるという趣旨から、残債務の支払いを免除する制度もあります。

これはハードシップ免責といわれます。

ハードシップ免責の要件も、抽象的には「やむを得ない」事由ですが、再生計画変更と違って残債務を免除するものであるため、再生計画変更よりも厳格な要件を満たす必要があります。

具体的には、以下のような要件を満たす場合にハードシップ免責が適用されます。

  1. ①債務者の責めに帰することができない事由により再生計画を履行することが極めて困難となったこと
  2. ②再生計画に基づく弁済額のうち4分の3以上を弁済していること
  3. ③免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと
  4. ④再生計画の変更をすることが極めて困難であること

ハードシップ免責の要件は、現実的には相当厳格に検討されることに加え、再生計画変更で支払いが可能と考えられる場合には適用されないため、ハードシップ免責は実際にはあまり使用されていないのが現状です。

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