「個人再生の手続き」に関するお役立ち情報
個人再生では否認権の適用がない
1 否認行為について
債務の支払能力がないにもかかわらず、財産を贈与してしまったり、本来の価値よりも低い値段で財産を売却してしまったりすると、債権者の利益を害することになります。
また、特定の債権者だけに弁済をすると、他の債権者との平等を害することになります。
こうした行為に対し、破産手続においては否認権の行使がなされることとなります。
2 個人再生では否認権の行使の適用が除外されている
個人再生手続では、否認権の行使を認めると、手続の簡易・迅速性が失われてしまうことから、適用が除外されています。
もっとも、否認対象行為があってもよいというわけではなく、債務者が否認対象行為をしており、その上で否認権行使の回避を目的として個人再生の申立てがなされた場合には、不当な目的による再生手続開始の申立てとみなされ、申立ては棄却されます。
手続開始後に否認対象行為が判明した場合には、否認権行使によって回復されるはずの財産額を加算した以上の弁済をする再生計画案を提出しなければ、再生計画案は認可されないことになると考えられます。
3 清算価値に計上する場合の具体的方法
破産手続において否認権が行使された場合でも、否認権行使の相手方から全額回収がされるとは限りません。
すでにその金員は費消してしまっており、ごく一部しか回収できないということも珍しくないというのが実際のところです。
一方、個人再生手続においては、否認権行使が行われた場合に回復されるはずの財産額を清算価値に計上するということになります。
しかし、全額の回復がされることを前提に清算価値に計上してしまうと、場合によっては不当に弁済額が高額となってしまい、個人再生自体が成立しなくなってしまうこともあります。
つまり、「否認権行使が行われた場合」については、現実的な回収可能性を加味すべきケースもあるということがいえます。
この辺りは非常に専門的で分かりにくい部分ですので、否認対象行為がある場合には、事前によく弁護士と打合せを行い、様々な可能性を念頭に入れて手続を行っていくべきかと思います。
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