「個人再生の手続き」に関するQ&A
小規模個人再生と給与所得者等再生の違いは何ですか?
1 個人再生には2種類ある
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の手続きがあります。
個人再生の手続きを行うにあたっては、この2つの手続きのどちらかを選んで申立てを行うことになりますが、仮に給与所得者等再生手続きを選択できる場合であっても、一般的には小規模個人再生を選ぶことが多いです。
その理由を簡潔に言うと、小規模個人再生を選んだ方が債務者の方にとって有利なことが多いから、ということになりますが、それはなぜなのか、両者の違いをご説明いたします。
2 給与所得者再生なら債権者の同意が不要
小規模個人再生を利用する場合、再生手続き開始後に提出する再生計画案に対し、過半数の債権者が同意し、かつ、その同意している債権者の債権額が総債務額の2分の1を超えていることが必要となります(民事再生法230条第4項、同条第6項)。
たとえば、A社から100万円、B社から150万円、C社から300万円の借入れがある場合の個人再生手続で、A社B社が賛成していてもC社が反対している場合(不同意の回答をしている場合)には、(100万+150万)<300万なので、民事再生法第237条第1項に基づき、再生手続は認可されずに廃止されることになります。
これに対して、給与所得者等再生においては、債権者の同意は不要となっていますので、何らかの事情により再生計画の認可基準を満たすだけの債権者の同意が期待できない場合(なかには、必ず不同意の回答をする貸金業者等もいると言われています)には、小規模個人再生ではなく給与所得者等再生手続を選んだ方がよいということになります。
3 最低弁済額の基準
再生手続を行ったときの弁済基準(再生計画認可後に返済しなければならない金額の算定方法)にも違いがあります。
給与所得者再生の場合、小規模個人再生の弁済基準に加え、“収入から最低限度の生活を維持するために必要な費用を差し引いた額(可処分所得)の2年分”を上回っている必要があります。
例えば、債務総額が500万円の場合、(清算価値が100万円を上回っていなければ)基本的にその5分の1である100万円が再生手続後の総返済額となります。
しかし、もし可処分所得の2年分が150万円となる場合、給与所得者等再生を選択すると総返済額が150万円に変わってくるのです。
そして、「最低限度の生活を維持するために必要な費用」は算定方法が決められており、通常かなり低い金額となるため、可処分所得は高額になる傾向にあります。
したがって、債務者の方にとって大きな関心ごとである、再生計画認可後の返済金額が、給与所得者再生の方が小規模個人再生よりも高額になってしまうことが少なくなく、小規模個人再生を選択される方が多いです。
4 給与所得者再生は収入が定期的かつ変動が少ないことが必要
「給与所得者再生」という言葉からわかるように、小規模個人再生と違って、給与所得者等再生では、定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれることが必要となります。
したがって、求められる収入の安定性の点でも小規模個人再生よりも給与所得者再生はややハードルが高く、あえて選択することは少ないといえます。
個人再生をした場合、財産はどうなりますか? 個人再生を自分で申し立てることはできますか?